「麻生が引っ越すんだって!」
噂がたって数週間が経った頃、また新たな噂がー…
「え…もしかして、高橋が原因?」
「妊娠って本当だったの!?」
小さな噂だったはずが、数週間もすればかなり大きな噂と化していた。
「妊娠とか、ウケるんだけど」
この一言に、教室中は一瞬静かになった。
みんなが声の主に注目する。
「麻生!?」
「楓!」
扉にもたれかかり、余裕の表情で麻生が立っている。
「引っ越しは、家庭の事情。後、病院に高橋といたのはお母さんの見舞いで付き添ってもらった」
淡々と話す。
「え…でも、どうして高橋が…」
「事情が事情だから。修学旅行のとき私帰ったじゃん?あれ、お母さんが自殺したから」
「「自殺!?」」
「ま、無事助かったから良かったんだけど。色々相談にのってもらってたんだ」
「そ…そうだったんだ…」
さっきの騒がしさとは違う。
気まずい雰囲気が漂う。
「だから、もう変な噂しないでよね。高橋に迷惑だから。それに、私もあんなのと噂になりたくないし」
「うん…ごめんね。楓」
「麻生、悪かった」
「言いづらいこと言わせて…本当にごめん」
みんなが麻生に駆け寄り、謝る。
「いいよ…それより…」
その様子を遠くから見ていた、泰葉。
「妹尾さん」
ドキ
麻生と目が合った。
「…ちょっといいかな?」
笑顔で手招きをしている。