「三橋」

さっきとは違う意味でほっとため息をついた私に、伊藤さんはこう言った。

「やっぱり俺にしろよ」
「へっ?」
思わず立ち止まって伊藤さんを見上げてしまった。
ななな、何の話…?!

「三橋が頑張ってるのは、俺が一番知ってるから。他の先輩じゃ駄目だ」

そこまで聞いて、やっとさっきの悩み相談の話だと理解できた。

「あ、ありがとうございます…」

思わずドキッとしちゃった。そんなわけないのに!

伊藤さんは電光掲示板の電車の発車時間を確認すると、足早に歩き出した。

「じゃ、また明日」