自分で自分のことを“キモダサ野郎”って呼ぶ奴もいないだろうけど。




俺の場合、わざとこのキャラを演じている。




黒縁眼鏡に、真っ黒に染めた髪。
歩くのに困らない程度に丸めた背中、極めつけはこの制服。





だから、『キモい』とか『ダサい』とか、逆に言うと、俺にとってはほめ言葉だったりする。





もしさっきの言葉を、素顔の状態で言われていたら、間違いなく俺はあの大根足の女を呼び止めていたことだろう。




『お嬢さん?俺にケンカ売ってる?
それとも……俺に何か期待して絡んできたとか……?』






って!!
違う!違う!




“何か期待して”とかいらねぇしっ!




くそっー-……




なんか最近、自分の考え方がホスト化してる気がしてしょうがない。




きっとあのバイトのせいだとは思う。




接客指導と言う名の、マネージャーによるホストマニュアル講座のせい。




一、お客様は全員美人だと思い込め

一、接客中は最高の笑顔と殺し文句で

一、流し眼を最大限に活用しろ




諸々……





こんなのが10ヶ条まであるんだから、マジ勘弁してくれってヤツで。




なのに……最近、自分でも恐ろしいほどその10カ条が身についてきている。




オーナー代理であり、有数のスカウトマンである凌さんに言わせてみれば、




『怜二には生まれながらにホストの才能がある』んだとか。




冗談じゃねぇ!




俺はホストになるつもりは微塵もねぇんだよ!!




そう意気込んでみても、結局自分がこれじゃあな……







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