「別に怒らないよ。それで由佳ちゃんが幸せならね」

 一馬さんはそう言うと、笑っていた。彼もわかっているのだ。私の幸せに彼が欠かせなくなっていることを。私はそっと唇を噛みしめた。

 駅を出ると、人気がなく閑散としていた。

 私は歩き出した一馬さんの後を追う。だが、その道のりを途中まで歩んだ時、私は彼がどこに行こうとしているのか気付いてしまった。それが確信に変わったのは、再び彼の足が止まった時だ。そこはもちろん木原君の家の前だ。

「木原君の両親に会えとか言わないですよね?」

 彼は銀色の私に鍵を見せた。

「今日は出かけてもらっているから大丈夫だよ」