翌朝、彼は駅に行くと、黒のブルゾンにジーンズという格好で迎えてくれた。一馬さんに会うのは久しぶりだった。彼はそんな時間の空白を感じさせないほど、優しい笑顔を浮かべていた。

「今日一日時間ある? 少し遠出をしたいんだけど」

「どこに行くんですか?」

 時間は大丈夫だが、問題はお金だ。ある程度は持ってきているが、場所によっては足りない恐れもある。

 一馬さんは目の前に切符を差し出す。そこに記されていたのは私の祖母の住んでいた、木原君の実家のある駅だ。

 嫌な予感を抱えながら彼に問いかける。

「何しに行くんですか?」

「昔話をしに行くだけだよ」

「話なら、私の家でしましょうよ」

 彼は自信に満ちた笑みで私の顔を覗き込む。