暗闇の中に電話の音が響く。顔をあげると、あたりは真っ暗になっていた。いつの間にか眠ってしまっていようだ。

 音を頼りに鞄から携帯を取り出すと、光に照らされた名前を確認する。彼の名前をこうしてみるのも久しぶりだった。

 電話を取ると一馬さんは早速話を切り出してくる。

「急だけど、明日ちょっとだけ出かけない?」

「え? でも」

「たまには俺のわがままにつきあって」

 彼にそういわれると断りにくかった。

 彼は明日の八時に駅でというと電話を切ってしまった。