私の言葉に彼は「さあな」というと曖昧な笑みを浮かべていた。

 家の前で彼を見送り、家に入る。家の中には誰もいなかった。ひっそりと静まり返った階段をのぼり、二階に行く。だが、いつもなら目をあわせようとしない隣の部屋の扉を確認し、ノブにかけていた手を離す。

 半年振りに冷たいノブに手をかけると、その冷たさが手の熱を奪っていく。それでも気持ちを引き締め、殺風景な部屋に入る。木原君の使っていた頃の部屋を思い出し、目頭が熱くなる。