「どうしてそんなことを言うの?」

 彼の落ち着いた声は、心の弱い部分を刺激する。つい甘えたくなる。

「それは君だって分かっているんじゃない。君が雅哉をずっと目で追っているのと同じ理由だと思うよ」

 彼はそう寂しそうに笑っていた。

 忘れたいのに忘れられないから。

 どうしてこんなに弱くて情けない私を好きでいてくれるんだろう。私はみんなに甘えて、助けられて迷惑をかけてばかりだったのに。

 今でも過剰に人に心配をさせているのに。