そんなことないと否定した私の言葉を彼は笑う。

「十年も友達でいると、いろいろ見えてくるんだよ。もっとも君はもっと分かりやすいけどね」

「私は」

 彼の言葉は暗に私の心が木原君にあると伝えていた。だが、私は否定しようとする。

 そんな私の言葉を彼の言葉が打ち消した。

「野村に夏前に言われたんだ。本当に好きなら、力になってやってくれってさ。別の人を好きになれれば、君が笑ってくれるかもしれないからって。今日も気分転換に俺に一緒に帰ってやれって言っていた。 自分のことは気にしないでいいからって」