彼は軽く頭を下げると、その場を後にした。木原君は振り返ることもしない。女の子は木原君の後姿を目で追っているのか、動こうとも、言葉をかけようともしなかった。

 私は野木君に促され、校舎の外に出る。

 五分ほど歩いたとき、野木君が足を止めた。彼は息を吐くと、天を仰いでいた。

「あいつはまだ君のことを思っていると思うよ」