木にまぎれるように私の視界に先に入ってきたのは男の人と、女の人。私は女の子そっちのけで、困惑した顔を浮かべる男性を見つめていた。

「私、先輩のことがずっと好きだったんです。だから受験が終わってからでいいからつきあってほしいんです」

 少女の震える声を聞きながらも彼は困った表情のままだ。断るつもりなんだろう。そう感じ取ってしまったことに罪悪感を覚える。

「ごめん。君とは付き合えない」

「大学に行くまででも、一日だけでもいいんです」

「ごめん」

 彼は首を横に振る。