苦笑いを浮かべると、それを鞄に入れることにした。

 二人はもう一度私に謝ると、慌てて教室を出て行く。

 誰もいなくなった教室で、ほっと息を吐く。そして、すぐ隣にある窓の鍵を開けると、窓を横に引く。

 窓から入ってきた冷たい風が私の髪の毛をまくし立てていく。目の前のグラウンドではサッカー部が練習をしている。

 こんな時間もあと高校生活で数えるほどなのだと思うと、今の何も対象物もなく観察することさえ、愛しい時間に思えてくるのが不思議だった。

 窓を絞めようとしたとき、窓に人の姿が映っていた。振り返ると、いつの間にか教室内にいた野木君と目が合う。