それを奪ってしまったのは間違いなく私。 「ごめんね。行こうか」 希実が私の背中をぽんと叩く。 きっと木原君は彼女といる時にはもっと笑顔でいるんだろう。 もやもやとした気持ちが固まるのが分かった。 つきあっているのに、それらしい想い出もないから、きっとすぐに忘れられる。 一年と少し前に戻ればいいだけだから。大丈夫。そう何度も言い聞かせていた。