食事と聞き、私はてっきりファミレス辺りを連想していた。だが、車が止まったのは料亭という言葉が相応しい立派な和風の建物の前だ。晴実も私と同じ心境だったのか顔を引きつらせ、辺りを見渡している。

 中に入ると着物を着た女性が出てきて私達を出迎えてくれる。その人は百合のお父さんが名乗る前に「北田さん」と彼らの名字を言い当てていた。

 彼女は私達を奥にある個室に案内する。壁には掛け軸かかけられ、その脇には壺が飾ってある。立派な外観に圧倒されていたからか、ものすごく高価な品に見えた。

 晴実が端に座り、私が真ん中に、その隣に一馬さんが座ることになった。テーブルの向こうには百合とそのお父さんが並んで座っている。この並び順になったのもスムーズにというわけにはいかなかった。

 百合は最初、一馬さんの前に座らされそうになっていたが、それを嫌がり晴実の正面の席に座っていた。一馬さんも私や晴実、百合のお父さんには声をかけるが、肝心の百合とは目線さえも合せない。私が感じた違和感が徐々に大きくなっていく。

 その時、着物を着た女性がメニューを持って入ってくる。メニューを確認しても、何が良いのか分からず、百合の勧めで彼女と同じものを注文した。