彼は最札口に切符を通すと、私達のすぐそばで足を止める。そして、苦笑いを浮かべた。

「タイミングが良かったね」

 だが、百合は顔を背けたま目を合わせようとさえしなかった。

 百合のお父さんは困ったような笑みを浮かべると、私達を見る。

「百合の友達ですか?」

 私と晴実は戸惑いながらも、自己紹介をすませた。彼も名前は知っていたのか、軽く相槌を打つ。

「よかったら、ごはんでも一緒にどうかな」

 彼は、料金は自分が払うからと言う。おごってもらうのも悪いと思ったが、断るのも気が咎め、話の流れで一緒に食事をすることになった。

「百合も大丈夫?」

「分かった」

 父親の問いかけに、ため息混じりにうなずいていた。百合は私達を見て、困ったような笑みを浮かべるが、まだ一度も一馬さんの方向をみていない。

 一馬さんも百合を見ることを避けているようだった。

 彼は百合に行き先を告げ、タクシー乗り場まで一緒に行く。五人が乗れる大型のタクシーがあったのにも関わらず、別々のタクシーに乗り込んだ。