一馬さんは二人を一瞥すると、表情を変えずに「行こう」と歩き出す。

 木原君が帰ってきたのは八時近くになってからだった。家には電話をしたみたいで、姉も両親も驚いた様子はなかった。

 ずっと百合と一緒にいたのだろうか。何をしていたんだろう。そんなことを考えてしまう自分が嫌でたまらない。

 彼がどこで何をしようが、聞く権利なんかないのに。