「どうかした?」
木原君の声に我に返り、首を横に振る。
ちょうど、昇降口で靴を履きかえた時、ふと晴実から渡された映画の券のことが頭を過ぎったのだ。デートをできるならしたい。
そして、私が誘えば、彼は断られないこともなんとなく分かっていた。それは私の家に彼が住んでいるから。要はそんな権利の乱用のようなことをしてもいいのかを迷っていたのだ。
「今日はいい天気だね」
わざとらしい言葉を口にして、その言葉を心から後悔していた。木原君の困った顔を見たからだ。何も言わなければよかったのだ。
「天気はいいけど」
そう口にした木原君の動きが止まる。彼の視線は門に向いていた。そこには紺色のジャケットにジーンズを着た長身の男性が立っていた。
一見見るだけでまずひきつけるのはそのスタイルのよさだった。細身ではあるが弱々しさを感じさせない。
足も長く、それでいて背筋もすっと伸びている。それが彼をより長身に見せ、帰宅している生徒が時折彼を見ていた。
「あいつ」
そううめくようにつぶやくと、足早に彼の元へ駆け寄っていった。いつもは声をかけてくれるだが、そのときだけはそんなことはなかった。
木原君の声に我に返り、首を横に振る。
ちょうど、昇降口で靴を履きかえた時、ふと晴実から渡された映画の券のことが頭を過ぎったのだ。デートをできるならしたい。
そして、私が誘えば、彼は断られないこともなんとなく分かっていた。それは私の家に彼が住んでいるから。要はそんな権利の乱用のようなことをしてもいいのかを迷っていたのだ。
「今日はいい天気だね」
わざとらしい言葉を口にして、その言葉を心から後悔していた。木原君の困った顔を見たからだ。何も言わなければよかったのだ。
「天気はいいけど」
そう口にした木原君の動きが止まる。彼の視線は門に向いていた。そこには紺色のジャケットにジーンズを着た長身の男性が立っていた。
一見見るだけでまずひきつけるのはそのスタイルのよさだった。細身ではあるが弱々しさを感じさせない。
足も長く、それでいて背筋もすっと伸びている。それが彼をより長身に見せ、帰宅している生徒が時折彼を見ていた。
「あいつ」
そううめくようにつぶやくと、足早に彼の元へ駆け寄っていった。いつもは声をかけてくれるだが、そのときだけはそんなことはなかった。



