「随分、家でも打ち解けてきた? 最初は彼の性格を考えると、結構難しいかなと思っていたけど」

 百合はお茶を飲むと、そう軽くたずねてきた。
 そのことで思い出したのは昨日のことだった。今日、晴実たちに言おうと思っていたのだが、百合の過去の話ですっかり忘れていたのだ。

「昨日、お姉ちゃんさ、木原君に料理を作らそうとしたんだよ。どれだけ料理ができないのかみてみたいとかいって、じゃがいもをボールいっぱい渡してさ」

「それをむいたの?」

 そういったのは百合だった。真っ先に彼女が反応したのは彼が料理ができないことを知っているからだろう。

「二つだけね。一つむくのに十分くらいかかるし、てつきはあやしいし。ひやひやものだったんだよ。怪我するんじゃないかって」

 昨日のことを思い出しながら、無性にお姉ちゃんのしでかしたことに苛立っていた。

 私がもうしなくていいと言っても、姉は良く分からない理論で私を黙らせる。

 百合はその姿を想像したのか、表情を和ませる。

「木原君って相変わらず不器用なんだ。でも、木原君が一緒に住むようになってから、楽しそうだね」
「うん。楽しいよ」

 以前と同じ家にいるとは思えないほど楽しいし、ずっと一緒に住んでいたいと思う程になっていた。

「最初はなきそうな顔ばかりしていたのにね」

「だって緊張するもの」

「でも、なじめているみたいでよかった」

 そう百合は優しい笑顔で微笑んでいた。