そんな百合の様子を見て、晴実は笑っていた。

「そんなにかっこよかったらもてるんじゃない」

「もうこの話は終わり」

 未練がありそうな晴実に、百合ははっきりと断言した。

 晴実は口を割らない百合に諦めたようだ。突然、何かを思い出したように鞄をあける。そして、チケットを二枚取り出すと、私に渡す。

 私が見たいと思っていた恋愛映画で、それも二枚ある。

「由佳にプレゼント。木原君と行けば? 中間テストかなり良かったんだから、そのお礼ということで」

 晴実や百合も私が木原君に勉強を教えてもらっている事は知っている。そして、私のテストの結果が今までよりも全体的に二割ほどあがっていたことも含めてだ。

 親からは驚かれ、木原君は私の両親から感謝されていた。

「こんなの無理だよ。誘えない。三人で行こうよ」

「私は恋愛映画には興味ないから、二人でいけば?」

 百合は淡々と返す。

「私も興味ないの。でも、人気あるらしいからおもしろいんじゃないかな。由佳は好きなんでしょう?」

「好きだけど」

 恋愛映画なんてベタなものに彼を誘うことなんてできない。

「いらなかったら、お姉ちゃんにでもあげてくれればいいから。私はいらないからさ」

 結局、私はチケットを受け取ることになる。見に行けずに上映期間の終わりに姉と一緒に見に行く羽目になりそうな気がするが、鞄の中に入れておく。