いつも冷静な顔を崩さない彼女の顔が明らかに引きつる。しまったという言葉がついてきそうだった。

「何で分かったの?」

 私の問いかけに晴実は笑顔で返す。

「顔に書いてあった」

 晴実は百合の腕をつかんだまま離さない。

「従兄弟って年上なの? 同じ年?」
「今、大学一年」

 彼女の声が次第に暗くなっていく。だが、晴実はそんな百合の様子に臆したこともなく、次々にあれこれ聞いていく。

 彼女が告げたのは私の姉の通っている大学名だった。だが、学年が違うので、面識はないだろうけど。

「じゃあ、その人を振ったんだ」

「だって好きじゃないし。変な人だし」

 彼女は頬を赤めながら、膨らませる。文句を言っているというよりは照れているような気がした。それに今日二度目となる変な人という言葉に違和感を覚えていた。

 彼女は人のことを悪く言うことは滅多になかったのだ。彼女との付き合いが短いからといわれればそうなのかもしれないけれど。

「でも、さっきから思っていたけど百合が誰かのことをそんな風に悪く言うなんて珍しいよね」

 私の心の中を見抜いたように、晴実が言う。

「何度言っても足りない程、本当に変な人なのよ」

 彼女は困ったように肩をすくめていた。木原君の従兄弟ってどんな人なんだろう。今まで彼からその話を聞いたことはなかった。

 イメージ的にものすごくまじめそうな気がするけど、百合の話を聞いていると、それは私の想像にすぎないのだろう。

「まあ、それ以上は追求しないでおいてあげる。でも、かっこいいんだろうね。木原君のお父さんもかっこよかったし」

「顔はね」