気が強い百合をそこまで困らすというのは相当押しが強い人だったんだろうか。

 美人な彼女は高校生に見えなくもないが、大学生と言われても違和感はない。きっと中学のときから相当大人びていたのだろう。

 彼女は長い髪の毛を耳にかける。そのとき、かけそこなった髪の毛がさらりと落ちる。

「そんなときに木原君が、自分が彼氏ってことにしたらいいって言い出したんだよね。私が困っていたから助けてくれたんだと思う。だから、つきあっているとか、二股をかけているとかそんな噂が流れていたの。晴実が聞いたのもそういう話なんだよね」

 百合は晴実を見た。

「そうそう。木原君を含めて、三股、四股かけてたって聞いた」
「人、増えているね」

 と言ったのは私。噂はかなりいい加減なものだと思う。

「それに、一応言っておくと、私、彼には中学のときにきっぱり振られているから気にすることもないから」

「木原君、百合を振ったの?」

「そうだよ。だから今は友達ってわけ。また変なこと考えないでよね」

 百合は返事をした晴実ではなく私を見て、念を入れる。つい最近の記憶に心が痛む。

「この子には前科があるからね。一人で暴走してしまうっていう」

 百合は肩をすくめる。

「要は余計なことを気にするなってことなんだけどね」

「分かっているよ」

 百合を振ったという噂は本当だったんだ。同時に気になったのが、彼氏の振りをしていたという話だ。普通のクラスメイトのためにそこまではするのか分からなかった。友達だったら当たり前なのだろうか。