206[短編]

 その通路は夏江の住む205の部屋の少し先で終わっていたのだ。

 確かにあの日、典子が入ったはずの206の部屋はどこにもなかった。

「ないよね?」

 夏江は不安そうな顔で典子を見ていた。

 彼女は心の中ではそんな言葉と目の前にある光景を否定したかったが、今の現時点ではそれを受け入れることしかできなかった。