206[短編]

「今日の帰り、夏江の家によっていい?」

「いいよ。きっと夢と現実がごっちゃになっているんだよ。たまにクリアな夢を見るとそうなることってあるでしょう?」

 その言葉はその部屋がないということを強調するような言葉で、夏江も必死に典子を庇おうとしているのだろう。

「そうだね」

 曖昧な返事をしながら、心臓の音は今までになく高鳴っていた。


 その日の帰り、夏江の住むアパートまで行く。

 金属でできた通路を歩き夏江の部屋の前まで行ったとき、息を呑む。