学校の前の弁当屋で買ったからあげ弁当を渡して、鈴子はすぐに帰った。



隆介と並んで食べた。



「なぁ、健太。お前は鈴子が好きか?」



突然、野球以外の話をされて、動揺した。



「お…おう。好きだ。誰に告白されても、好きにはなれないんだ。」



「そっか。頑張れよ。そこまで愛されて、鈴子も幸せだよ」




俺は感じた。


何となく、隆介が恋愛に悩んでるんじゃないかと。


だから、自分から鈴子の名前を出したんじゃないか、と。



「隆介はどうなんだよ。もう理沙ちゃんとも長いだろ。最近どう?」



「どうもこうも、忙しくて話してないな。別に寂しくもないけど。」



その横顔からは寂しいという隆介の気持ちが感じられた。



「好きなんだろ?」





その問いかけに隆介が答えることはなかった。


ただ、遠い目をして、からあげを頬張ったまま口を動かすのも忘れていた。




隆介は母親に捨てられた過去があり、

女性に対して、素直になれないと聞いたことがある。



一度だけ、その話をしてくれたことがあったが、

それ以来一度もその話題には触れることができない。