「よ!鈴子!!俺のストレートちゃんと見てろよ!」


春の高校野球選抜の予選。


3回戦まで進んだ俺達の高校。



マウンドに向かう前、ベンチに座る鈴子の肩を叩く。



「健太、完投してよ!!」


鈴子は心にもないことを言う。





きっと、隆介の出番を待ってるんだ。



俺はブルーの錆びたベンチにドリンクを置いて、マウンドへ向かう。



夏の大会が終わったら、もう一度…

告白しよう。




いつからか、そう決めていた。


隆介のおかげかも知れない。



「まだお前のこと好きだって!!」


隆介は柄にもなく、優しいことを言う。



ここまで野球を頑張ることができたのは鈴子がいたから。


鈴子がいつも笑って俺達を見守っていてくれたから

俺は、何度も立ち上がることができたんだ。




第一球…




もちろん


渾身のストレート。