火薬の匂いが胸の奥を切なくさせた。
キュンとするような、苦しいような。
「何?」
鈴子は花火に夢中で、俺の方を見ないまま。
落ちている石に転びそうになって、俺の袖が伸びた。
「ごめん、健太ぁ!」
やっと俺を見た鈴子。
俺はその細い綺麗な手を、握った。
俺の大好きなボールを毎日磨くその手を、初めて握った。
一瞬顔を赤らめた鈴子。
「あ、ありがと、健太。」
「危ないから・・・」
このまま、ずっと手を繋いでいたかった。
今なら、言える気がした。
「あのさ、俺・・・」
何度かここまでは言うのに、花火の音で鈴子の耳には届かない。
お好み焼き屋の前で俺と鈴子は、Uターンしてみんなの元へと歩き出す。