練習に遅れてきたことのない鈴子が、今日は姿が見えなかった。


キャッチボールの途中で、俺は練習を抜け出した。





いつもいるはずの人がそこにいないだけで俺の心が落ち着かなかった。



どうしてだ?




普通の女の子。



俺のファンでもなく、ただ、毎日俺達野球部のために頑張ってくれているマネージャー。





俺は、ひんやりとした廊下を靴下のまま走った。


夏休み前の今の時期は、まだ暑さも我慢できる。

校舎の中に入ると、急に体が冷えた。



誰もいない廊下を走る。


靴下が音を吸収してくれて、俺の足音も聞こえなかった。




誰かをこんな風に探すのは、

小学校の頃のかくれんぼ以来だ。




俺は、自分の教室を通り過ぎて、鈴子の1年3組の教室へ急いだ。


いつの間にか覚えていた鈴子の教室。


他にもマネージャーはいるのに…鈴子は、少しだけ特別だったかもしれない。




でも、その程度の存在。



好き、とか


気になる、とか そんな感情は俺にはいらないはず…