慶太の定位置は、ソワレのカウンターの奥から、私の部屋に変わった。


あの日以来、亜由美からは何の連絡もなく、私から連絡する事もなかった。

そうして、気付けば新しい一年が始まりまもなく新学期になろうとしている。

新学期が始まれば、もう卒業はすぐそこだ。

「ねぇ、慶太。卒業したら、この部屋ともお別れだね。」

私は、慶太を膝に乗せて自分の部屋を見渡した。


あの後、洋子さんは私にある提案をしたのだった。


『凛ちゃんさえよければ、なんだけど。姉さんが住んでた家に住んでくれないかしら?
もちろん、今すぐでなくてもいいの。
私の育った家でもあるから、あの家を残したくて。
慶太と二人でどうかしら?
あの家にあるものは自由に使ってもらっていいし、費用は一切負担しなくて大丈夫。
だから、凛ちゃんの自立の一歩くらいの感じでお願いできないかしら?』

それは、この先何も決めていない私への救済案のようにも聞こえた。

私は、迷う事なく承諾した。

両親も、最初は警戒していたようだけど、最終的には一人っ子で頼りない私が鍛えられたらと了解してくれた。