マンションの前に着くと、唯人君は運転手さんにすぐにお金を渡して


私の手を握ったまま降りてくれた。



もう足は震えていない。


でも、そんな気遣いがたまらなく嬉しかった。




「……夜深…」



タクシーから降りてすぐに唯人君は私を強く抱きしめた。




「っ…唯人君……嫌だ…」



ダメだよ唯人君。



私は弱くない。



弱くないから……



「っ…唯人君…」



弱くない。



だけど、だけどね……?



私は唯人君にギュッとしがみついた。



「ずっと強さが欲しかった」



夜は好き。



でも……



「怖くて、夜は好きだけど…怖くて仕方なかった」



電話を抱えて眠ったことなんて、たくさんあった。




「電話を待っても、お母さん達からは連絡は来なかった。強がっても、本当は怖くて、寂しかった。」



夜、出歩いて


ひとりに慣れて



友達はみんなはねのけた。



じゃなきゃ、私は弱いままだから……