蝉の恋

「珍しいじゃん。アンタから飲みに誘うなんて。」

目の前でグラスを傾ける相手は豪快にビールを飲み干すと、店員に二杯目を注文していた。

「いや、ちょっとな…。」

そう言いながら俺も負けじと杯を空にする。

「まさか~。浮気がばれたんじゃないでしょうね。」

目の前の女はガッハッハと威勢よく笑う。


「そんな訳ねぇだろうが。」

「それに浮気じゃねぇ。セフレだ。」


目の前の女はオンナでは唯一、俺のそっちの事情を知っている人間だ。

「それなら、どうしてそんな顔してるのよ。」

まぁ、確かに浮かない顔はしていただろう。


「いやな、バレたのは俺じゃなんいだよ。」


目の前の女の顔はニヤリと笑う。

「何?セフレの方でバレたの?」

修羅場、修羅場と面白がる様にニヤついている。

「それもちげぇよ。」

ん?と相手の顔が停止する。