蝉の恋

「まるで蝉だ。」

「ん?何が?」

女は脈絡のない俺の発言に首をかしげながら辺りを見渡す。

やがて、意を解した様にクスっと笑う。

「僕はこんなに素敵だよ。あなたのことを愛してるよ。だから誰か付き合って~。
みたいな感じ?」

周りを意識してか少し声のトーンを落とし、そう言った。

「そんな感じ。」


二人でクスクスと笑いあう。

「アンタは鳴かないの?」

酒が入っているせいか少し目がトロンとしてきている。

「鳴かねぇよ。」

鳴いてどうしろと言うんだ。

「俺はそんな無節操なことはしねぇの。」

そう言う俺に女はセフレがいるくせに…。と目で語っていたが、それは黙殺する。

セフレに愛を語らったことなどない。

そんな所で操を立ててどうする。そう言われれば、それまでだが…。