甘いクスリ

 


『堂野家の男子たるもの
いつまでもプラプラせず
身を固めろ。』


ここ数年、口煩く、
姉貴が言ってたのは、
俺がいい年越えたオッサンと
呼べる歳ってのもあんだろうが


もしかしたら


とっくに


認めてくれていたのかも
しれない。


一人前の男として
やってける器量が
あるんだって。





・・・貯金(たくわえ)は
とりあえず、と、しても・・・ 



「やっぱり千香子さんは
スゴイ人だね。」



琴子が、俺の隣に膝をかかえ
座ったまま呟く。


「ああ。色んな意味でスゲー。
俺、一生頭あがんないかもな。」

情けない気分で、
通帳の最後のページを開く。


「!!!」




・・・・なっ・・・







何で


あのヒト(←鬼から昇格)は
普通にモノゴトを
進めないんだろう。



開いた最後のページには
姉貴の性格を表すかの様な
文字で

『今、コレを開いたその手で、
琴子ちゃんに預けろ。』

なんて、書いてある。