甘いクスリ

 

そこに

並んだ数字をみて



図らずも
涙を零してしまった。








そこにあったのは、
毎月決まった金額の打列


『働かざるモノ食うべからず。
サクサク働きやがれ。』

『新しいギターが、ほしい?
はあ?食費も入れずにか?
大バカ者め。働いてこい。』

『学費は、
立て替えてやったまでだ。
高校から専門学校の分までは
月賦で返せ。』


本当に、『コレ』が、肉親かと
『コレ』が、見物人が、
常時たかっていた姉か?と
思うほどの豪快な取立っぷりで
我が目を疑っていたものだった。

そこらの街金の方が
可愛いげがあるかと思われる。

そうやって、怒涛の如く
回収されていったモノの
行き先が、どうやらコレだ。


進路を姉貴に告げた日、
『わかったよ。』とだけ
言った姉貴は、
甘いことなんて一度も
ゆったり、しなかった。
それどころか、鬼の様な
毒舌っぷりだった。


でも、あの人は、
一度だって、俺を腐したり
バカにした事はなかった。