甘いクスリ

 
自然な流れで、続く狩野さんが
両手をあげ前に進み出れば
会場が更なる歓声で沸き立つ。

この人は本当に上手い。

技術もそうだし、
雰囲気の作り方も、そう。

里奈の隣で澄んだ音色を
響かせば、なぜか、
俺の極近くから
『さすが、師匠っ』と
崇拝の声がして。

首だけ捻れば、透と七海が
拍手喝采の代わりに、
ストロークは止めることなくも
何度も、ウンウン唸っている。


・・・やばい・・・

ここへ来て、
相当なプレッシャーを感じる。


半ば、ビジュアルだけで
生徒を獲得している様な俺が
この後、弾くって・・・


・・・皆・・・
納得してくれるんだろうか


ここにきて、心配になる。
(↑基本的に、お調子者)

そうは言っても、今更
逃げも隠れもできない状況で
心臓がバクバク音を立て始めた


にっ・・・逃げるな。俺。

生徒に、カッコイイ所
見せるんだって
ずっと思ってたじゃないか。


・・・ヘタレは、
卒業するんだって・・・

琴子に認めてもらいたいって。