「指輪ができたって連絡受けてから急に不安になってさ。告られてフラれたらどうしようって考えたら、アトラクションどころじゃなくなって……」


レイカちゃんのことが気になってたまらないんだと思ってたけど。

……そっか。

楓は最初から今日、あたしにスキって伝えてくれるつもりだったんだ。


「さっきまで泣いてたくせに、今度は何笑ってんだよ」

ちょっとイジけたように楓が口を尖らせる。

「幸せだなーって思っただけ」

たぶん楓の前でこんな笑顔見せたことないってくらいの、とびきりの笑顔を見せた。

その瞬間、目の前が真っ暗になる。


「えっ、楓?」

あたしの体は再び、楓の胸の中へ。


「そんな顔、他の男に見せんなよ」

「え?何?」

「あー…何でもねーよ」

「心配しなくても、笑顔の安売りはしないから」

「……聞こえてんじゃねーか」


何も心配なんていらないよ?

だってあたしは、楓に夢中だから。


「楓こそ、あんまりレイカちゃんばっかりにかまってると、あたしグレちゃうからね」

「心配いらねーよ。レイカにはもう言ってあるから」

「何を?」

「オレにとって“女”は、虹那だけだって」


あたしにとっても“男”は楓だけだよ?


「…あっ、そういえばあたし、プレゼントなんて何も……」

指に光る指輪を見ながら、楓へのプレゼントが何もないことに気付いた。

こんな展開になるなんて予想もしてなかったからーー…


「いいよ別に。オレが勝手にしたことだし」

「でも……」

貰いっぱなしなんて、申し訳ないよ。

「じゃあ1つだけ、今ほしいもんあるんだけど」

「今?でもあたし何も持ってないよ?」

「あー、モノじゃなくてその……」

「何?」

「キス……していい?」