紅芳記


男は、今にも大声で泣き出しそうです。

それでも真っ直ぐに私を見ています。

男の眼が、すべてまことのことと物語っているようでした。

「本当に…………。
おなみは…。」

私の心がついて行かぬのか、涙も流れません。

「そう、か…。
邪魔をしました。」