紅芳記


城の外は、殊の外のどかな雰囲気でした。

百姓達は、田畑の手入れに精を出しており、その横で子供達が遊んでいます。

「あれ、御方様じゃあございませんか!」

「本日はどういったご用件で?」

「そういや、お殿様が戦じゃなかったんですかい?」

沼田城下の百姓達は、日頃から度々、城に来ては収穫した野菜や果物などを持ってきてくれていました。

彼らは私が輿入れした時から、何かと気を配ってくれ、気さくに話してくれます。

そんな彼らに感謝の意味を込めて、山林の一部を渡したこともあります。

「皆、精が出ますね。」

「へい、ここいらは不作続きだったんですけどね、今年は良い米が採れそうなんですよ。」

「そう。
それは楽しみじゃな。」

私が笑いかけると、彼らも笑顔を返してくれます。

彼らを戦火に、巻き込みたくない…。

暫くの間、談笑してから再び馬に乗ります。

そうして、城に繋がる要所、ひとつひとつを見て回りました。

城下には、戦とは関係のない、平和な空気が漂っています。

「奥方様、次はどちらに?」

「城に、その前に寄りたいところがある。」

「はは。」