「それはつまり、もしも戦になった時には上杉にお味方せよという事でございますか?」
私はつい、口を挟んでしまいました。
殿と慶次殿は驚かれたようで一瞬口を紡がれましたが、すぐに慶次殿が大きな声でお笑いになりました。
「いやいや、これはしたり。
そんなつもりじゃねえさ、俺はこのちんちくりんが誰に味方してもいいし、しなくてもいい。
むしろ美人の奥方殿のご実家が徳川ってんじゃ、そっちに着くのが普通だろう!!」
「え、失礼ではございますが、それでは慶次様は何をしにおいで下さったのでございますか?」
上杉の家臣となった慶次様ならば、お味方を集めに来ていると思いましたがどうやら違うようでございます。
「俺は別に、お館様から言われて来るんじゃねえさ。
暇つぶしと武者修行のついでに近くに来たからちんちくりんの顔を見に来たのよ。」
「暇つぶし…?
上杉の家臣となったのにでございますか?」
「そりゃそうだ!
あっはっはっはっは!!
俺は確かに家臣団に名を連ねちゃあいるが、結構好き勝手させてもらってるのさ。
それに戦が近いだろ、武者修行にいくっつったら、直江の小僧にはちょっと渋られたがこうしてここまで来てるしな!!
でだ、可愛いちんちくりんの顔を見に来たら、つい口が過ぎただけさ。」
慶次殿のご様子からして、これは本当の事でしょう。
武者修行しに会津から信濃まで来ているとは、相変わらず変わり者のようです。
「しかしあんた、本当に賢い奥方殿であることよ!
ああ、勿体無い!
俺があと三十年若けりゃ嫁に貰ったのに!!」
「慶次殿、武者修行のついでに小松を口説くのはやめてくれ。」
「ああ?
ちんちくりん、奥方殿に惚れとるのか!
いっちょ前になったなあ!!」
「…。」
「ま、そーゆーことだ!
もしお前らと戦になったら大ふへん者の旗掲げて受けて立ってやるから待ってろよ!!
じゃあな!!」
慶次殿は庭に落ちてきた木の枝で大きく大ふへん者と書き残して、嵐の様に去って行かれました。


