紅芳記


「大兄上、兄上!」

甘えん坊だった昌親殿もすっかり立派な若武者となり、かつてのお可愛らしさは影を潜めておりました。

「昌親!
元気にしておったか!?」

昌親殿は領内の平井郷に居住しており、上田、沼田領の補佐として私や殿とは度々顔をあわせる機会がありましたが、ずっと上方にいた信繁殿にとっては実に数年ぶりの再会なのでございます。

「兄上こそお変わりなく。」

「なんじゃ、水臭い!
そうそう、お主嫁を貰ったそうではないか!
やることやっておるのか?」

「兄上…。」

出会い頭に冷やかしてくる信繁殿に若干引いている昌親殿ではございましたが、やはり兄上とのお話は楽しいようで男衆のお酒はどんどんと進んでいきました。

そんなご様子に、お酒は程々になるように給仕の者に言付けてから、遠慮するべきであろうと早々に退出致しました。