「奥方様、また紅葉を眺めていらっしゃるのでございますか?」
「ああ、ふじか。
この紅葉は本当に見事じゃ。」
「お殿様のお心遣いは、本当にありがたいことでございますね。」
「本当に。
さて、この子は紅葉の元に生まれるのじゃな。」
「ふふふ、奥方様らしくもなく、潮らしいことを申されますな。」
「何じゃと?
私はいつも淑やかじゃ。」
「いいえ、じゃじゃ馬の姫様はいつまでも姫様でございますれば。」
「…そなたも変わらぬな。」
「姫様こそ。」
ふじは私が嫁いでくる前からの一番の侍女でございますれば、こうしてゆるりと話していると心が落ち着いて参ります。
その時、まんの乳母のユキが産小屋に訪ねて来ました。
「失礼つかまつります。
姫様方が、奥方様にお会いしたいとのことでございます。
お通ししてよろしゅうございましょうか?」
産小屋には基本的には産女と手伝いの侍女しか入らぬもので、特に殿方は穢れに当たらぬよう絶対に入っては来れません。
しかし、女子である姫たちは入ってもその後に清めれば特に問題はありませんでしょう。
私はそう考え、姫たちを連れて来るように命じました。
それから間もなく、まんとハルに抱かれたまさがやって来ました。
「母上!」
「まんは甘えん坊じゃの。
急にどうしたのじゃ。」
「もうすぐ弟が産まれるのでございましょう?
まんも母上と一緒に紅葉にお願いに参りました!」
と、まんは元気よく答えます。
あまりにもはっきりと弟と言うので、少し驚きながらも
「まんは弟が欲しいのか?」
と尋ねると
「いいえ、まさが母上のお腹には弟がいるって!」
とニコニコしながら答えました。


