紅芳記


信濃、沼田城に帰ってからは、驚くほどに穏やかな日々を過ごしておりました。

久しぶりに右京殿や、これまで交流のあった家臣の妻子ら、親しい友人達と語り合ったり、沼田領の検地に付き従い、城下の領民達と親しくなったりと本当に平和な日々でございます。

上方では毎日のように何かしらの事件があったり、諸大名との外交があったりと息つく間もありませんでしたから、このような平和が懐かしく、嬉しいものでございます。

夏には殿と子らと川に出掛けて魚を採って遊び、秋には城下の稲刈りにも出向きました。

身重の体で、なかなか大変なことでは御座いましたが、百姓の仕事の大変さを知り、彼らのためにもよい政をという思いになります。

そして臨月となった神無月、沼田城内に誂えた産小屋に城下の僧を呼び寄せて祓い清め、いよいよお産に臨む仕度をしました。

もう3人目の子ですもの、侍女たちも慣れたものでございます。

此度の産小屋には、殿のお取り計らいによって見事な紅葉が部屋からよく見えました。