紅芳記


「おお、小松!
まんと一緒であったか。」

先駆けから一刻ほどしてから、殿のお渡りがございました。

「殿、お帰りなさいませ。」

「うむ。」

「ちちうえ、ちちうえ!
まんが、かいたえにございます!
ちちうえにさしあげまする!」

殿が部屋へ来た途端、まんが殿のおみ足へ飛びついてからずっと握りしめていた紙を渡しました。

殿はまんを抱き上げると、絵をご覧になって嬉しそうに笑われました。

「これは、父と母と、まん、まさ、源之助か?」

「はい!」

殿はその絵を私とまんに見せながら問われました。

それに、まんがいかにも子供らしゅう元気に答えます。

「うむ、まんは絵が上手いのう。」

殿に褒められ、まんは嬉しそうに抱きつきます。

「しかしな、まんよ。
あと一人足らぬのう。」

殿は笑いながら仰せになります。

まんは何のことかわからないのか、

「おじいさまでございますか?
それともおばあさま?
それではふたりたりませぬ。
ああ、おばさまでございますか?」

まんの言うおばさまとは、お夢殿のことでございます。

しかし、それも殿は違うと言い、まんは不思議そうな表情になります。

殿はそれを面白がりながら

「まん、また弟か妹が生まれるのじゃ」

と答えを教えました。

まんはぱあっと明るくなり、

「まあ、またきょうだいがふえるのでございますね!
まんは、うれしゅうございます!」

と殿に飛びつかれました。

殿は満足そうな顔を浮かべ、

「そうじゃ。
だから、母上を大切にするのじゃぞ。」

と仰せになります。

まんは再び元気よく返事をするのでした。