紅芳記


「しかしまあ、あの本多殿とお話で来たことは、大きゅうございますぞ。」

父上と…?

殿達の話題は、何時の間にやら中納言様の話から父上の話へと移っておりました。

「儂も、思わぬ収穫であったと思うておったところよ。」

「ええ。
どんな城を落とすにも、先ずは支城から攻めるもの。
家臣、それも本多殿ほどの重鎮と繋がるのは、それだけでも大きな力となりまする。」

「そうじゃな、まさに、小松のおかげと言うわけぞ。」

殿はそう仰せになると、大きく口を開けて笑われてしまいました。

そして、これからのことを話し始めたとき、赤子の大きな泣き声が聞こえて参りました。

それも、1人ではなく何人もの。

何事かと思っておりますと、ユキが駆けて来て、襖が大きく開かれました。

「突然のご無礼、どうぞお許しくださいませ!
若様姫様方が、大げんかをなされてしまわれ、お止めすることも叶わず…。」

ユキは泣きそうな声で訴えてきます。

「小松、頼めるか?」

子らのことは、乳母に一任しているとは言え、泣きそうなユキを放ってはおけず、私は急いで奥向きに向かう羽目となってしまいました。