紅芳記


「これは、嬉しいな。
義姉上、今は元服し、江戸中納言と呼ばれておりまする。」

「まあ、中納言に…。
大きゅう御成り遊ばされて…」

竹千代様改め、中納言様は凛々しい若武者にございました。

あの時は七つでございましたが、その幼い頃の面影も、今はよりこの方を引き立てております。

「義姉上も…」

「ま、それは私が老け込んだということにございますか。」

「そっ、そうではございませぬ!
私はただ…!」

「冗談にございます。」

私がそう言って笑うと、中納言様はムッとなされて、義姉上はやはり相変わらずじゃ、と毒づかれました。

「伊豆守様も、お久しゅうございます。」

「いや、こちらこそ、お久しぶりにございますな。
この度、子供たちが伸び伸び暮らせるようにと、京を離れて大坂に参りましてございます。
本当は本領にと思いましたが、御役目がござりますゆえに。」

そう、大坂に来たのは、徳川に取りいる為ではなく、あくまでも“子供達のため”。

表向きには、そういうことにしておりました。

無論、ほとんどの大名家の子は、京で育てられております。

しかし、真田家の後継ぎとして、広い世界で多くのことを学べるように。

此度の大坂への移住の大義名分は、このようになっておりまする。