紅芳記

「かの猿めは、全く持って、完全に呆けておる!
何が朝鮮じゃ、己の周りに、足下をすくわれようなどとは、全く考えておらなんだ。」

「父上、」

大殿らしくも無く、広間にてそのお考えを述べようとすると、我が殿がお諫めになりました。

「…まずは人払いじゃ。
御前、急ぎ室を用意いたせ。」

「はい、お前様。」

御前様は近くに居た侍女に、人払いした部屋を用意させました。

「さて、何から話そうかの。」

「まずは、太閤殿下に何があったのかお聞かせ願いとうございます。」

「うむ…」

私としては、羨ましい限りにございますが、大殿はこのように、京の御前様に度々国のことをお話になっているそうです。

まあ、殿が私にそのようにお話し下さらぬのは、私が望んでおらずとも、徳川に内情を漏らさぬ目的もおありなのでしょうけれど。