紅芳記


それから五日間、姫は様々な儀式をせねばならず、私も穢れを掃うために産小屋から出ることが出来ないため、やっと姫のお披露目となりました。

姫の乳母となった、ハルに二の姫を抱かせ、広間に入ります。

広間には、大殿をはじめとし、殿、源次郎殿、京の御前様、利世殿、そして真田家の重臣たちが居ました。

設えられた席に腰を下ろし、二の姫をハルから受け取って抱きます。

ハルは一礼して、一歩引いた下座につきました。

「小松、ご苦労であった。」

殿にそう言われ、私は深く微笑みます。

殿の方ににじり寄って、二の姫の顔をお見せすると、殿は恐る恐る手を伸ばされて、二の姫を抱き上げられました。

「はは、まんはわしに似たが、この子は小松に似ておる。」

そう言いながら、姫をあやすようにされますと、姫はきゃっきゃっ、と嬉しそうに手を伸ばしました。

殿はそれを見、嬉しくなったのか、ぎゅっと姫を抱きしめました。

「そうじゃ、姫の名じゃが…」

「待て、それはわしから言おう。」

今まで黙っていらっしゃいました、大殿が手を挙げました。

「こたび、姫の名はわしが考えたのじゃが…」

と、大殿が前置きをし、懐から半紙を取り出されます。

どうやら、名付け争いは大殿に軍配が上がったようでございます。

そして、その半紙には、仮名で、『まさ』と書いてありました。

「この、源三郎の二の姫の名は、わしから一字取り、仮名で『まさ』とする。」

まさ…。

「ま、良いではごさいませんか。」

京の御前様も嬉しそうに微笑まれました。

「まさ姫…」

姫にそう呼びかけますと、満面の笑顔で手足をバタバタとしています。

「あうー」

「父上、姫も気に入ったようです。」

殿は少し悔しそうに仰せられました。

「おお、そうか!」

その言葉に、大殿も嬉しそうな笑顔になりました。

本日、二の姫の名がまさ姫と決まり、まさ姫は乳母のハルに預けられ、この日はそのあと宴が行われました。