紅芳記


「う、生まれましたーっ!」

ふじが声を張り上げ、仲橋が駆け寄ります。

仲橋は生まれた赤子を見て、声を上げました。

「姫君様にございます!」

姫…。

「そうか、姫か。」

生まれる前は、是非にも男の子を、と考えておりましたが、生まれた今では、とにかく無事に生まれてよかったと、その一心でございます。

侍女達がせっせと姫の身体を拭いたり、産湯につけたり、後片付けをしてくれて、私はほっと一息つくことが出来ました。

しばらく座ったまま、産み褥にもたれていると、ふじが身体を綺麗にし、真っ白なおくるみに包まれた姫を連れてきてくれました。

「二の姫様にございます。」

「…可愛いの。
そうか、まんは姉上様になるのじゃな。」

「左様にございますね。」

「殿達に知らせは?」

お産は穢れでもあるため、殿方はこちらに近づく事は出来ません。

出産中に聞こえた、甲高い僧侶の祈祷の声。

きっと、殿達がかき集めて、ご自身も祈ってくださっていた事でしょう。

いち早く、お知らせをしたいのでございます。

「只今、源次郎様の御方様が殿達にお知らせをしてくださっていますよ。」

「そうか、利世殿が…。
ありがたい事じゃ。」

「仲橋殿のご報告では、大殿とお殿様が名付けで揉めていらっしゃるとか。」

ふじが笑いながらそう言うと、私も自然と笑えてきてしまいます。

「二の姫や。
健やかに、大きゅうなるのじゃぞ。」

私の腕に抱かれた、まだ小さな姫に、私はそっと語りかけました。