紅芳記


ひとしきり談笑し、再び大きな笑い声が湧いた頃。

「びぇぇえーーーん!!!」

つい先程まで、大人しく石田様に抱かれていたまんが、泣き出してしまいました。

「おおっ!
如何したのです!?
まん姫殿!?」

石田様は大慌てで、まんを揺すってあやそうとなさいました。

「い、伊豆守殿!」

それでも泣き止まず、殿に助けを求めます。

殿も必死に、まんを泣き止まそうとしました。

「ほうれ、父じゃぞー。」

石田様よりまんを渡され、同じようにあやされます。

「ひっく。
ひっく…。
びぇぇえーーーん!!」

それでも、まんは泣き止みません。

「こ、小松!
まんは如何したのじゃ!?」

殿も白旗を上げ、私はまんを殿から奪いました。

よしよし、とまんをあやし、語りかけます。

「あら…。」

「ひっく、ひっく…」

「そう、お腹が空いたのじゃな。
よしよし。」

私はまんを抱いたまま、立ち上がりました。

「殿、まんはお腹が空いたのでございましょう。
ユキに預けて参ります。」

「お、おお…。
頼む。」

私は軽く頭を下げ、部屋を後に致しました。

それから、ユキにまんを預け、部屋に戻ります。

部屋の中で、殿と石田様は、赤子の話で盛り上がっておりました。

「石田様、せっかくにございます故、夕餉など如何でございましょうか。」

「それは良い!
治部殿、是非にも。」

「…では、有り難く。」

石田様の快諾に、殿もすっかり上機嫌になり、この日はいつもよりお酒が進んでいらっしゃいました。

そして、日がすっかり暮れ、月明かりの頃、石田様はお屋敷にお帰りになりました。