紅芳記


「静まれーっ!!」

その武将の一声で、騒がしかった群衆達がすぐに静まりました。

それから、三条河原に掘られた大きな穴の前に茣蓙が置かれ、その奥には御首が…。

「ち、ちちうえさま!」

縄に繋がれたまま、一人の姫が声をあげました。

「黙れ!」

側にいた足軽が、その姫を棒で打ちます。

「きゃあああ!」

その光景に、誰もかれもが言葉を失いました。

「これより、秀次公縁者の処刑を開始する!」

一人の侍が刀を抜き、その刀を水で清めます。

「正室一の台様、前へ!」

その声に、一番前に座っていた方の縄が解かれ、その方は立ち上がって穴の前の茣蓙へ座り合掌しました。

「一の台様…」

「ははうえ…」

誰もが息を呑み、辺りは静まり返ります。

「ながらへて
ありつるほどの
浮世とぞ
思へばかなる
言葉もなし」

辞世の句を詠まれ、頭を下げ。

邪魔にならぬよう髪を両脇に退け、侍が刀を振りかざしました。

──!!

一の台様の御首が落ち、身体もろとも穴に投げ捨てられました。