紅芳記


しばらくの沈黙が生じます。

私も殿も、互いの目から視線を外しません。

「…わしが良いと言うまで、どこにも行くでないぞ。」

「…え?」

「頃合いを見て、才蔵を遣わす。
良いか、わしが良いと言うまで、何があろうと勝手な行動はならぬ!」

「は、はい…!」

「さ、部屋に戻るのじゃ。」

「はい。」

私は深く一礼して、殿の御許を後に致しました。